ここではゴミ屋敷条例とはいったいどのようなものなのか、条例により家がゴミ屋敷と認定されるとどうなるのかを紹介します。
ゴミ屋敷とは
家や土地にゴミをためこみ、ゴミが積み上げられた状態の家をゴミ屋敷と呼びます。ゴミ屋敷の定義は地域によって多少の差はあるものの、ゴミの量が多く処分が難しい家という認識で問題ありません。ためこんでしまう原因は「ゴミを捨てない」、「他の場所からゴミを集めてしまう」などが挙げられます。空き家に近隣住民がごみを不法投棄し続けた結果、ゴミ屋敷となるケースもあるそうです。ゴミ屋敷の住人は、ゴミのことを資源や財産として扱うため、捨てるという選択肢を自分では取りません。
ゴミ屋敷には、悪臭や害虫の発生、ゴミへの引火による火事など、近隣住民へ被害が出てしまうといった問題点が複数あります。近隣トラブルによる事件・事故の発生につながりやすいのもデメリットの1つ。ゴミ屋敷が原因で命を失うケースもあるので、早めの解決が求められます。
ゴミ屋敷条例について
ためこんでいる本人が「ゴミではない」と主張すると、所有権が認められてしまうのも問題点の1つ。直接取り締まることができないので、自治体ごとの対処が求められます。そこで誕生したのがゴミ屋敷条例です。
ゴミ屋敷条例は自治体が定めるもので、その地域にのみ適用されます。例えば足立区には、撤去費用を100万円まで負担するといった条例を2013年に施行。実際にこの条例で解決した事例もあるそうです。ただ、地域によって内容に差があり、罰金を課される地域もあります。中野区では住民の名前や住所の公表、横浜市では排出支援など、地域によって対処法は異なるようです。
また地域によって定める条例のため、ゴミ屋敷条例がないところもあります。その場合は自治体に対し訴えかけることが大切です。苦情や相談が集まることで、条例がなくても対応はしてもらえるでしょう。
ゴミ屋敷への措置
ゴミ屋敷条例による措置として、初めに調査が行われます。実際にゴミ屋敷に立ち入り、その地域で定めたゴミ屋敷の定義に当てはまるかどうかを確認。この調査は近隣住民からの苦情や相談により開始します。
ゴミ屋敷であると確認が取れると、住人に対し指導や勧告を実施。これに住人が従わなかった場合、次は命令としてゴミを処分するように伝えます。この命令も無視してしまうと、行政代執行という強制撤去を開始することになります。
行政代執行とは
自治体からの指導や勧告、その後の命令を無視してゴミを放置すると、行政代執行が行われます。これは行政機関や国によってゴミを処分するため。撤去費用は住人に請求するうえ、その金額は数百万という事例もあるそうです。もし片付けをせずに放置していれば、最終的に莫大な負担を背負うことになるのです。
最初に実行された行政代執行は京都市で、2015年に執行されました。その時のゴミ屋敷では、道にまでゴミが置かれていたそうです。近隣住民の通行の邪魔になっており、万が一災害が起きた時の支障にもなると判断。何度もゴミを撤去するように勧告をしましたが、住人はゴミを財産・資料だと主張しました。自主的な処分も行わず、その年に愛知県でゴミ屋敷から出火した事故もあったため強制撤去を開始。2時間ほどかけてゴミを撤去したそうですが、その量は軽トラック5~6台分もあったとのことです。
行政代執行の中には、ゴミの撤去や処分に総額約2580万円かかったケースも。これは東京都のケースで、所有者が既に亡くなっていたそうです。もしこれが住人のいる状態で行われた場合、2,000万以上もの撤去費用が住人に請求されるとうことになります。
数千万とはいかずとも、行政代執行では数十万~数百万もの費用が請求されると考えておきましょう。ゴミの量にもよりますが、住人に金銭的負担がかかることに変わりありません。ゴミをためすぎてとてつもない額の費用を請求されないためにも、家族や業者などのサポートを受け対処することが重要です。
一般的な流れは指導・勧告からの命令、その後に行政代執行という形で実行されます。ただ、地域によって差があるので一概にどこも同じとは言えません。地域ごとの条例について、一部取り上げてみましたので、参考にしてみるとゴミ屋敷の改善に役立つでしょう。
新宿区
新宿区では空き家のゴミ屋敷に対する条例も立てています。悪臭や害虫の発生、火災のおそれがある建物をゴミ屋敷として対象に認定。もし住人や所有者がいて勧告や命令に従わない場合、名前の公表や行政執行を区長が決定します。
横浜市
横浜市では調査をする段階で、住人の親族関係を知ることができるそうです。ゴミの排出支援も行っており、住人だけではどうにもならない場合に市がサポートします。
大阪市
区長が市長からの命令を受け、ゴミ屋敷に対応しなければならない場合は対策会議を開きます。この会議には地域住民や関係機関などが参加し、各々の意見を出しつつどう対処するかを決定。参加者は会議中に知った内容に関して他者に喋ってはいけないという規則があります。
京都市
京都市では行政代執行までに行う訪問と接触回数を設定しています。126回の訪問と61回にもおよぶ住人への接触を実施。接触する際には清掃や出火時の対応を指導し、清掃の協力や健康相談などを行うそうです。